物悲しい美、揺らめきこそが本質の愛
高橋大輔
ライラックワイン
まず
リンクでの
立ち姿がセクシー。
ダンサーの美である。
妖しくもしなやかに
それでいて急激に力強く
身体が揺らめく。
そう、軸をしっかりと根付かせ、
音に撒かれ身体が揺らめく。
それこそがダンサー。
優れた
ダンサーは
セクシーさも
エネルギーも格段である。
それは
安っぽい色香のそれ、
とは違う。
表現に躍起になった奇妙な
必死さ、力の凝り固まった
それ、とは違うのだ。
優れた感性の元、
極限の鍛錬の元、
身体は音を奏でる。
感情を奏で、物語を創る。
わずか何分かの
その日の、その時の
リンクの上の物語を創って
しまうのだ。
スケートは人間が演るものだ。
どうしてこうも
奥底を掻き立て
その多様な愛を呑み込み、
リンクに咲かせることが出来る
のか。
スケートは人間が演るものだから
人間らしく
人間的で
人間が恋しくなるような
そんな滑りで当然なのだ、
と、そう思わせる。
なだらかな滑りと
音と身体とが
物悲しく美しく
そうやって
揺らめくことが
本質の愛なのだろう。
悲しみさえも
抱きしめ
哀しみがあるからこそ
輝く。
美しいダンサー。
悲しみと哀しみと
温もりとが、
内側から外側へ。
美しいダンサーよ。
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